夢日記

INCEPTION
00 THE FOOL - Eve
18 THE MOON - Sin Vanargand Zarathustra
ペンローズの階段を模したシーン。映画では現実と夢の違いを説明する際に登場する。永遠に登り続けられる階段であり、三次元(現実)ではありえないことも、平面である二次元(夢)では描くことができる。
「毎日眠るためにここに来ているのか」
「いいや。目覚めに来てる。彼らにとっては夢が現実だ。あんたは違うのかね?」
— Christopher Nolan “Inception”(2010)
『インセプション』のなかに真実が存在するとしても、それを見つけることができるのは現実世界においてではなく、夢の世界においてである。すべてのノーラン作品と同様『インセプション』はフィクション──ここでは夢──こそが(真実への障壁ではなく)真実へと至る道であることを明らかにしている。
夢とは切り離された領域として現実世界の重要性を強調することは映画の最も重要な虚偽であり、観客は、この虚偽を越えて、映画が夢の世界を最重要視していることを理解しなければならない。ノーランは夢から覚めることが真実の発見ではなく、真実からの逃避となることを示している。

Last Night in Soho
18 THE MOON - Sin Vanargand Zarathustra
21 THE WORLD - Gilbert Rein
本作はタイムトラベルものではありません。エロイーズ(主人公)は夢の中で他人と入れ替わる夢を見ているだけであって、過去を改変することはできないんですから。彼女は、ただ目撃することしかできない。エロイーズ、そして観客がグラマラスだと思っていたものに、徐々に悲劇が生じてくる。しかし、それを止めようとしても、何もすることができない。そこから、この作品における“夢”が“悪夢”へと変化していくんです。
「あなたに私は救えない」
— Edgar Wright “Last Night In Soho”(2021)

Murder on the Orient Express
18 THE MOON - Sin Vanargand Zarathustra
02 THE HIGH PRIESTESS - Suzumi Araha
なぜ、私がオリエント急行殺人事件における殺人の善悪に議論の余地があると述べたのか。それは、正しいことを測る尺度は決して普遍的なものではないからである。
確かに、私たちの社会には法律や憲法というものがあり、それらによって極めて具体的に私たちの行動は制限されている。その意味では正しいことを測る具体的な尺度として、法律や憲法が機能しているともいえるだろう。
「この世には善か悪しかなく、その中間は存在しない」
— Agatha Christie “Murder on the Orient Express”(1934)
しかし、そうした法律や憲法には必ず、それらが基盤としている思想や価値観がある。そして、基盤としての思想や価値観は多様に存在しており、どの思想や価値観が最も優れているのかについて、これまでも数々の論争が繰り広げられてきた。
その意味において、正しいことを測る尺度は普遍的ではない、と私は述べたいのである。